某月某日、辰口温泉に宿泊しました。辰口温泉は、金沢駅から車約40分の隠れ家的温泉地。石川県といえば、和倉温泉や加賀温泉郷を思い浮かべる方が多いと思いますが、辰口温泉は、旅館3軒ながらも、金沢市内から近いため地元では大変人気があります。そのうちの1軒である「まつさき」にお世話になりました。
玄関に入ると、見事な借景が。ロビーには、旅館に古くから伝わる源氏物語の屏風と、石川県出身の作家・泉鏡花が愛用した硯箱と直筆の短冊が展示されています。泉鏡花は、明治時代を代表する小説家です。鏡花は、この旅館に逗留しながら当時の「まつさき」を舞台とした『海の鳴る時』を執筆したそうです。こんなところからも旅館の歴史を感じますね!ちなみに、金沢市内の「泉鏡花記念館」では、鏡花の作品やゆかりの品々が展示されているので、あわせて訪ねるのもいいのかもしれません。
今回の客室は、新館「鳳凰」2階の「しぎ」。「鳳凰」という名前だけあって、大変立派!!露天風呂に月見庭園、ベッドの隣にはマッサージチェア・・・今回の宿泊の目的は、「客室でのんびりと癒しを求めて」だったので、希望通りの空間です。和室は、どっかり座布団に座る形式ではなく、足の高いテーブルとイスが用意されています。何だか不思議な感じもしましたが、今回は高齢の母親が一緒のため、こちらの方が足を曲げることがなく良かったです。
朝は、窓を開けると、庭園の気持ちの良い空気が部屋に入り込み、清々しい気分になります。そんな中でいただく豪華朝食は、夕食を完食したにも関わらず、こちらも完食。夕・朝食とも、ご飯はお釜で炊き上げていただきました。こんなところが旅館の食事の醍醐味ですね。
あっという間の旅館でのひととき。短い時間でしたが、とっても満たされる時間でした。最後に、女将さんが見送りに。女将さんの優しい笑顔に、いつかまた会えることを期待して帰途につきました。歴史と今の洗練された趣のある、静かでゆとりを感じさせる「まつさき」は、大変素敵な旅館でした。