500年の歴史!岩手【早池峰大償神楽】を学ぶモニターツアー参加レポート

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2024年度大償神楽 モニターツアー
2024年12⽉7⽇(⼟)〜8⽇(⽇)の2⽇間、*and trip.編集部が岩⼿県花巻市のユネスコ無形⽂化遺産「⼤償神楽(おおつぐないかぐら)」を学ぶモニターツアーに参加してきました︕1泊2⽇の⾏程で、神楽を取り巻く歴史や⽂化を学び稽古の体験をとおして、「民俗芸能を知り、その伝承に関わること」を⾃分事として考える貴重な時間になりました。今回は、このツアーの様⼦をお届けします。

▼【大償神楽】についてご紹介しています

1日目:大償神楽を「観て」学ぶ

現代社会の課題である⼈⼝減少や少子高齢化により、全国に約20,000件存在するとされる民俗芸能において、担い⼿不⾜が一層深刻になっており、活動が困難となった民俗芸能の活動中断、廃絶が少しずつ進んでいます。
 本ツアーは、こうした民俗芸能の担い手不足の解決につながる一手として、民俗芸能が伝承される地域へ、地域外から「通って」、民俗芸能の芸を習得し、地域の担い手とともに活動をすることで、民俗芸能の伝承活動を持続的なものにしようとする「通い神楽モデル」の考え方を旅行商品として販売し、神楽を観るだけではなく、実際に演じることで、民俗芸能との関わりを深め、地域に通い続けるきっかけと生み出すための企画です。
 今回は、岩⼿県花巻市の「早池峰神楽」のうち、「大償(おおつぐない)神楽」を知り、鑑賞し、そして演じることのできるツアーとして催行されました。

まず1日目は、花巻市内の文化財の学習と、大償神楽の演舞を鑑賞する学びの時間です。

花巻市総合文化財センター

新花巻駅から、バスに乗り込み揺られること約30分。まず訪れたのは、「花巻市総合文化財センター」です。ここは、市内文化財の情報発信や保護の拠点施設となっています。古代から山岳信仰の霊場として信仰を集め、希少な高山植物群落でもある早池峰山をとりまく自然と文化を紹介する展示の他、今回のツアーのテーマである「早池峰神楽」の展示もあります。今回は、副所長さんがガイド役を務めてくださり、展示物を丁寧に紹介してくださいました。

「早池峰神楽」は、⼤償(おおつぐない)と岳(たけ)の2つの神楽座の総称で、ユネスコ無形⽂化遺産として登録されている、地域に誇る⺠俗芸能です。霊峰・早池峰山で修行する修験山伏たちが始めたとされ、加持祈祷の型が取り入れられた、500年以上の歴史を持つ民俗芸能であるといいます。その舞は勇壮、優雅であり、公演の際には、県内外から多くの方が鑑賞に訪れるとのことです。
「神楽面」(総合文化財センター常設展示室)
副所長さんのガイドの後は、⼤償神楽保存会に所属する吉⽥さんから、⼤償神楽の歴史や現状、現在⾏っている取り組みについてご説明をしていただきました。大償神楽の演者として活動する吉田さんは、花巻市職員でもあり、市職員が地域課題を解決するための、様々な実践研究を行っている「花巻市地域おこし研究所」の班員として活動をしています。その研究活動の中で、地元の⼈だけでなく地域外の⼈にも稽古に通ってもらい、演者として育てていくという「通い神楽モデル」を開発し、民俗芸能における演者確保の持続的な仕組みづくりについての研究を続けています。
このあとの鑑賞会で舞われる3演⽬についてもご紹介いただきました。
大償神楽についての座学

花巻温泉 ホテル紅葉館「おまつり広場」での大償神楽鑑賞

しっかり⼤償神楽について予備知識を得たあとは、本⽇の宿泊地でもある花巻温泉ホテル紅葉館にて⼤償神楽の特別公演を鑑賞しました。ツアー参加者は最前列で、⼤迫⼒の演舞を間近で堪能することができました。約1時間の公演の中で、3つの演⽬を鑑賞しました。

三番叟(さんばそう)

蛭子命(ひるこのみこと)という神様の舞と言われ、神楽の稽古で最初に習得する、基礎となる所作が多く含まれる舞です。40演目あるといわれる舞の中でも、舞う時間は短めの10分程度ということですが、テンポが速く、飛んだり、反り返ったりと曲芸的な動きで体力がいるため、神楽を舞うことができる体を作るということで、神楽衆が神楽の稽古を始めるにあたって、一番最初に稽古に取り組む舞なのだそう。おめでたい席で舞われることもあるそうです。
三番叟

鞍馬(くらま)

鞍馬寺で修行を積んだ⽜若丸(のちの源義経)と唐(もろこし)の天狗の首領、善界坊の兵法比べを題材とした、番楽という舞のうちの一演目です。牛若丸と兵法比べのシーンでは、⼑と棒が激しくぶつかりあったり、舞手が⾶び跳ねたりと、⼤迫⼒の舞でした。
鞍馬

権現舞(ごんげんまい)

神楽の最後に必ず舞われる⼤切な演⽬。⼋百万の神がこの世に現れる際の姿である「権現様」が、無病息災・悪魔退治・五穀豊穣などを祈念します。演⽬の中盤には、今回のツアー参加者が舞台に上がり、「身固め」の体験をしました。身固めは、参拝者一人ひとりへの「頭かじり」と、権現様の体をくぐる「胎内くぐり」を行うもので、無病息災にご利益があると言われています。とても貴重な経験でした︕
権現舞「身固め」

2日目:大償神楽を「体験」し、歴史に会いに「行く」

1⽇⽬は、頭を使って学び、目で早池峰神楽を鑑賞し、充実した時間を過ごしました。2⽇⽬は、メインイベントとなる⼤償神楽の稽古体験と、⼤償神楽にゆかりのある神社を巡ります。

お待ちかね 神楽の稽古体験

早池峰神楽が伝承される花巻市大迫地域の中心地にある「⼤迫交流活性化センター」にてお待ちかねの神楽体験タイムです。神楽鑑賞会で舞っておられた神楽衆のみなさんと権現さまがスタンバイしてくださり、⾃⼰紹介をしてから早速稽古開始︕90分の体験時間でどこまで習得できるかドキドキ。

今回稽古をするのは「しんがく」という、主に早池峰神楽が奉納される神社の例大祭で、披露される、⼤償神楽の⼊⾨となる演⽬です。これは、お祭りの際に権現様のお供をしながら舞うもので、権現様がお越しになった、ということを集落の方にお知らせする意味がある舞だそう。神楽衆のみなさんによるお⼿本を⾒せていただき、いざ実践︕舞で使⽤する幣束(へいそく)という採物(とりもの)を⼿に携えて、動いてみますが…腰の下げ⽅や、⼿の形など初めはとても難しく感じました。途中、神楽衆からの個別のアドバイスを受ける中で、「掛け声を大きな声で出してみよう」というアドバイスと、「動きにくい形は無理のある形。自然な足踏みで体が勝手に動いてくる」という発見もあり、少しずつコツを掴んできました。
しんがくに初挑戦!
1時間ほど練習をすると、お⼿本をみながらとおして舞えるように︕あっというまに、稽古もクライマックス。ここで、なんと神楽装束も着せていただける嬉しいサプライズがありました。その装束姿で、最後に舞台に上がり稽古参加者全員でしんがくを通して舞う成果披露を⾏いました。⽣の演奏に合わせて舞う瞬間、⾃分も神楽衆の⼀員になった気分になりました。
舞台で成果披露

歴史探訪:「田中神社」・「大償神社」

神楽を舞う貴重な経験に感動した私たち。最後は、⼤償神楽にゆかりのある神社2社に訪れました。⼤償神楽を伝授したといわれる「⽥中神社」と、大償神楽が奉納される「⼤償神社」です。どちらも、昨⽇と同様に⼤償神楽保存会の吉⽥さんに同⾏いただき各所で解説をしていただきました。

田中神社は早池峰の里宮との位置づけにあるとのことで、実際にお参りするとちょうど早池峰山 の方に向かってお参りしていることになるそうです。車のない時代、町から歩いて早池峰山に上り、お参りするには時間も労力もかかるため、里宮が作られたのでは、とのこと。毎年お正月には早朝から元旦祭が行われ、大償神楽においては、この元旦祭での御神楽奏上がその年の一番最初の活動だと言います。
田中神社
そして、⼤償神社では、基本的に祭事の際にのみ開いている社殿内も特別に見せていただけることに︕大償神社では、年末年始や、夏場に神事が行われており、祭事の際の奉納神楽は神社から下っていたところにある「神楽の館」で行われるとのこと。神楽が奉納される様⼦を想像すると、古くから続く伝統の重みを感じ、⼼が震えました。2社ともに、地域の⽅々が中心となって⼤切に管理をされているのだとか。とても綺麗にされており、⼤償神楽の⽂化が現代の暮らしにも深く根付いているのだと感じました。
大償神社(参道の階段は約100段!)

参加者の方の感想

・大償神楽を観たことはあっても、神社には行ったことがなかったので説明も聞けて良かった。

・演者でなくとも、何らかの形で大償神楽に携わっていきたいと思った。

・神楽体験が素晴らしかった。

・伝統芸能を絶やすまいという意気込みが伝わり感動した。

おわりに

参加者の中には花巻が⼤好きな⽅や、神楽や伝統⽂化に興味がある⽅など、参加者同⼠でも交流し、有意義な時間でした。また、⽇本の素晴らしい伝統⽂化の継承を考える、充実した2⽇間となりました。⼤償神楽の伝統を守っていこう、新たなチャレンジに挑んでいこうとしている⼤償神楽保存会のみなさまの意志が伝わり、新たに演者として活動し、担い手となる方やあたたかなサポーターとなる方が持続的に花巻・大迫地域に通い、早池峰大償神楽がこれからも持続的に活動されていくことを願っています。読者のみなさんも、まずは自分の住む地域の伝統文化について考えてみることから始めてみると、意外な発見や楽しさがあるかもしれませんよ。

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