丁寧に造って 丁寧に売る ~青梅線沿線の酒蔵 田村酒造場~

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田村酒造場さまにインタビュー

Q:田村酒造場の特徴や酒造りで大切にしているポイントはありますか?

A:丁寧につくっていることですかね。
歴史的にいい話が色々あっても商売目的で飛び付かず、地道にお客さんを増やしていくということをずっとやってきたのがうちらしいところでしょうか。丁寧につくって丁寧に売る。酒造ですから丁寧に作るのは当たり前ですが、丁寧に売るというのが難しいんです。信用や存続に関わるから。それを逸脱しないでやってきました。
田村さま
田村酒造場外観
お酒の味わいとしては、近代なら主に東京の人に飲んでもらっているので、淡麗の辛口が特徴になります。
ただ、個人的には淡麗辛口を追求するよりも、生まれたままに近いもののおいしさを伝えていきたいと思うようになりました。
濾過したりして無理に淡麗にするのはどうなのかなと。炭、カーボン濾紙を使うと淡麗にはなるんですが、生まれた赤ちゃんをいきなり整形するような気になってしまい…。精白度合いも今のお酒はとても高いですから、しぼり出てきたそのままの味も昔よりも遥かに精度が高いです。

Q:お水は奥多摩の伏流水だそうですね。

A:そうです。水は、酒造りがしやすい中硬水です。
我々酒造りをしている人間は、環境に対しては少し敏感かもしれませんね。井戸水を使っているので、汚染されては困る。農薬を使って流れ込んだりということには敏感です。定期的に水質は調べてきましたが、幸いにも問題があったことはありません。

Q:これから秋の季節におすすめのお酒を教えてください!

A:やはりひやおろしや、しぼりたてなど、これからの季節のものは飲んでいただきたいですね。あとは、無濾過生原酒はおすすめです。度数は濃いですが生酒です。通常は生酒は熱処理して酵素を死滅させるのですが、火入れしないで生のまま流通させるので、遠いところにへ流通させられず。このお酒は地元だけでやっているのですが、絶対おすすめです。

Q:こんなふうにお酒を楽しんでもらいたい、というアドバイスなどはありますか。

蔵の様子1
蔵の様子2
A:暖かい時期は冷たいお酒、冬の極寒はぬる燗でというのが美味しいと思っています。日本の消費者の7割以上は冷やして飲むと言われていますが、いいお酒を温かくして飲むのも美味しいものなので、試していただきたいですね。そしてお酒を飲む行為を文化として捉え、自分流に楽しんでいただきたいなと思います。器などもマイグラスとか、お猪口とか、自分の好きなものを選んでね。
冷やして飲むのがおすすめなのは、フルーティーな香り系の酵母が多い純米吟醸から上の吟醸酒、大吟醸です。大吟醸は一番コストがかかるお酒で、香りは華やかで含み感も華やかです。とても手をかけた味で食中酒ではなく、単体で食前酒などが良いかと個人的には思っています。また、いつでも大吟醸がいいとは限りません。食べながら、おしゃべりしながらずっと飲んでいられるような普通の純米酒や普通の本醸造でも良い酒はたくさんあります。
お料理の一歩後ろに添えてあるのがお酒だと思うので、何と食べ合わせるかの方が重要です。傍らから一歩下がったところが食べ物との良いポジショニングだと思っています。単体で楽しむものもありながら、お料理を主役にと楽しむものもあるんですね。
また、地酒は地の食べ物とも食べ合わせがよくできているのが面白いんです。例えば、白身魚が主流の瀬戸内で飲まれるお酒はやや甘い。逆に高知は脂ののった鰹にあう辛口が発展したんですね。そういうことを知っていると、かっこいい飲み方ができそうですね。

Q:福生という地域で長く根を下ろして歩んできた田村酒造場の歴史とは?

A:酒造元とは、昔から地域とともにずっと歩んできており、地域を代表する人でもあったんです。政治に関わっている人もいっぱいいますし、地域を盛り上げるための担い手の一つとしてやってきています。例えば“村”だった時代から、三流の村だったら二流にするために、酒造りの商売以外にも、たくさん自分たちの時間を割いて、地域づくりをしてきたというのが多くの酒造元の歴史だと思います。地域と共に歴史を積み重ねてきた、というのが酒造の歴史でもあるんですね。
例えば今の中央線や青梅線は私ども酒蔵も出資して引いたものです。青梅線は玉川上水を使った水上輸送により飲み水が汚染されてしまったことを受け、鉄道輸送に移行する際、主に奥多摩の石灰石を立川へ運び、そのまま軍事工場のあった川崎へ運ぶ役割をしていました。このように、地域と共に、地域を考えて、平和に生きていけるように努力するというのが酒蔵姿勢であったと思います。

Q:昔から関わっている地域のイベントなどはありますか?

酒造りに最適な水を得た喜びに由来する代表する酒銘の「嘉泉」
田村酒造場外観
A:福生だと七夕祭りが7月にあります。ここ3年間再開されていませんが、以前は石川酒造さんと福生地酒祭という大きな看板を出して、樽酒をガンガンに冷やして升酒を振る舞い、美味しい焼き鳥屋さんを呼んで、気軽に立ち飲みで楽しんでいただいたりしていました。
また、実は、今年11月に初めて蔵開きをします。これまで田村酒造場は“閉ざされた酒蔵“でした。門戸からあまり気軽に入れないような。ご時世もあり200名限定ですが、いよいよその日はオープンにしようと思っています。

酒蔵見学実施中です!

田村酒造場には、国の登録有形文化財に登録された建築物も。そんな福生の歴史とともに歩んできた酒蔵を見学してみませんか?
団体での蔵見学は引き続き中止となっていますが、少人数での蔵見学は再開しています!

■蔵見学について
・月2回(土曜日)
・試飲なし
・最大15名様まで(1グループ5名以下)
・事前予約(電話予約のみ)

※状況により蔵見学の休止もございますので、ご了承くださいませ。
※詳細は田村酒造場の公式HPでご確認ください。
田村酒造場
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