古都と漆のふるさとをつなぐ新しい日本の旅をご提案!【漆の魅力に迫る京都~岩手3日間の旅・体験レポート①】

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堤淺吉漆店
日本の歴史・文化を語るうえで切っても切れないのが漆。工芸品や文化財など、日本国内のいたるところで漆が使用されているのを知っていましたか。今回は漆の魅力をもっと身近に、そして存分に体験してもらおうと2泊3日の訪日旅行者向けモニターツアーを実施したので、その様子を3回に分けてみなさまにお伝えします!

プロローグ

2024年11月、日本の古都・京都と東北・岩手を巡る2泊3日の訪日旅行者向けモニターツアーを実施しました。一見何のつながりもなさそうに思えるこの2つの地域ですが、実は日本の歴史・文化に古くから結びつく「漆」でつながっています。京都をはじめ全国にある寺社仏閣等では漆が塗装などで使用されていますが、そこで使用される国産漆の大半が岩手県で生産されています。2023年の全国生漆(きうるし)生産量は1,651kg。そのうち岩手県の生産量は1,344kgであり、国産漆のなんと8割が岩手県で生産されていることになります。

今回のモニターツアーは、主に訪日旅行客をターゲットに実施しました。寺社仏閣などで多くの漆を使用する京都と、漆の生産地である岩手県二戸市・八幡平市を巡りながら、漆の文化的価値や素材としての完成度の高さを学んでもらい、訪日旅行者にとって馴染みの薄い東北エリアを含めた「新しい日本の旅」を提案しました。
漆の魅力に迫るモニターツアーは東京駅からスタート

1日目 京都市・金閣寺(鹿苑寺)

今回のモニターツアーで最初に訪れたのは、京都の一大観光地となってる「金閣寺」。正式名称を鹿苑寺といい、1397年に室町幕府の三代将軍・足利義満によって造られました。1994年にユネスコの世界文化遺産に登録された金閣寺ですが、漆とどのような関係性があるのか気になりませんか。その答えは黄金に輝く舎利殿「金閣」に貼られた金箔の下に隠されています。

接着剤として使用される金閣寺の漆

今から37年前の1987年に行われた大改修では、金閣に貼られている金箔が張替えられました。10cm四方の金箔が10万枚も使用されたこの大改修ですが、建物の表面に金箔を張り付ける接着剤として使用されたのが「漆」です。石川県の輪島漆器や福島県の会津漆器などのように表から「見える」使い方がある一方で、金閣のように「見えない」漆の使い方もあります。ちなみにこの大改修で使用された漆の総量は1.5t。2023年の全国生漆生産量が1,651kg(≒1.6t)なので、非常に多くの漆が大改修で使用されたことが分かります。

金閣寺をはじめ岩手県の中尊寺や三重県の伊勢神宮など、日本国内の寺社仏閣等で広く使用されている漆ですが、化学塗料ではなく漆が現在も使用されるのには理由があると、日本では珍しい漆塗りと漆掻き(漆の採取)の両方を行う平井さんは話します。現代では一般的な化学塗料は大量生産が可能なものの、徐々に劣化するという特徴があります。塗った直後が一番美しく丈夫である化学塗料に対し、漆は正反対の特徴を持っています。漆に含まれる成分は空気中の水分から酸素を取り込むと液体から固体へ変化するという性質があり、時間が経つと徐々に丈夫になるので、耐久性の求められるこうした建築物で重宝されています。その一方で漆は紫外線に弱いという弱みがあります。この弱みを補うため、金閣では一般的な金箔の5倍の厚みを持つ金箔を2枚重ねで貼っており、金箔の非常に小さな穴を通る紫外線から漆の劣化を防いでいます。
金閣寺と漆の関係性について説明を受ける参加者

1日目 京都市・堤淺吉漆店

金閣寺の見学を終えて次に訪れたのは、地下鉄烏丸線の四条駅から徒歩5分ほどの場所にある1909年(明治42年)創業「堤淺吉漆店」。ここではウルシの木から採取された漆樹液を塗料として使用できるよう、精製・塗装精製・調合・調色を一貫して行っています。

奥が深い漆の特徴と精製

堤淺吉漆店で最初に見せていただいたのが漆の入った樽。採取後に何も手を加えていない生漆は木製の樽に入れられた状態で各地へと運ばれますが、この樽が国産漆と外国産では少し異なります。国産漆の最大シェアを誇り、岩手県二戸地域を中心に採取される浄法寺漆(じょうぼうじうるし)は割竹で締めた木樽に入れられており、採取した場所や時期、さらには採取した人の情報が記されています。一方、外国産の大半を占める中国のものは金属の薄い板で締められた木樽に入れられ、採取した地区の情報が記されているそうです。
左の樽には国産漆、右奥の樽には中国産漆が入っている
続いて見せていただいたのが、巨大な樽のように見える精製機。この精製機の中に入れた生漆を撹拌(かくはん)し、熱を加えると滑らかな漆が出来上がります。生漆には水分が30%含まれており、この水分を調整するのが精製と呼ばれる作業です。漆は木が育った環境や採取した時期、さらには同じ木でも採取の仕方によって異なる性質になるという非常に繊細なもの。性質の異なる生漆を使用する人・用途などに合わせて細かく調整するため、精製機内部に設置された羽のサイズや羽を回転させる速度、漆に加える温度などを毎回変えているそうです。精製された漆をガラス板に付けて透明感や乾燥の速さなどを確認したのち、顔料を練りこむことでみなさんがよく見る様々な色の漆に仕上がります。
巨大な精製機の前で説明を聞く参加者

漆の世界を身近に感じることができる「Und.」

堤淺吉漆店には「自然と人々の暮らしを繋げる拠点」として、「Und.(アンド)」という2024年4月にオープンした施設が併設されています。1階では漆芸道具や材料に加えて拭き漆の体験キットなどが販売されており、日々漆を扱う方からそうでない方まで、幅広い方に漆の世界を身近に感じてもらうことができます。3階には若手漆芸職人が創作を行う工房と、ワークショップやイベントを開催するスタジオがあり、住空間に漆のある世界を作りたいという想いの込められた場所になっています。
Und.1階のショールーム
漆芸道具が並ぶショールーム

漆の様々な可能性を追求

今回はUnd.3階のスタジオで、堤淺吉漆店の四代目を務める堤卓也さんに漆の新たな可能性について説明していただきました。堤さんは漆を精製するという通常の業務に加え、漆を世の中に広めるための様々な取り組みを全世界に向けて行っています。漆の素材としての魅力を伝える冊子の発行を皮切りに、漆塗りのサーフボードやギター、自転車などを制作をはじめ、人々の生活に身近なものに漆を使用するなど、漆の新たな可能性を日々追及していますが、こうした取り組みの根底にはある考えがあると言います。

その考えというのが、「多くの人に漆が自分たちに身近なもの、日常でも使える有用なものであるという共通観念を持ってもらい、生産者や職人が安定的に漆に関する作業ができる環境を構築する」というものです。日本国内で1年間に消費される漆の量は年々減少しており、今から50年ほど前の1975年が約500tであったのに対し、現在では30tを下回っています。漆の消費量が減ると生産者や職人の活躍できる場がなくなり、いままで受け継がれてきた漆の文化が失われる恐れがあります。そうした危機から漆の文化を守り、後世へとつなげていくため、身近なものに漆を使用してその良さを多くの人に知ってもらおうという取り組みが行われています。
漆の可能性について説明していただく
堤淺吉漆店ではこの他にも、漆を通じて環境問題に関心を持ってもらう取り組みを行っています。非常に丈夫で見た目も美しい漆は人や地球にやさしい自然素材であり、人と自然を結びつける存在です。木を植えて育て、採取するというサイクルを通じて、モノを大切にすることの重要性を世界に発信しています。
漆を使用した様々な器
堤淺吉漆店 詳細はこちら

モニターツアー1日目が終了

漆の文化的価値や素材としての完成度の高さを学ぶ3日間のモニターツアー。1日目の京都では漆が接着剤として使用されてる金閣寺、そして漆の精製を行う堤淺吉漆店を訪れました。2日目は漆の生産地である岩手県を訪れます。

▼モニターツアー2日目の様子はこちら

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