古都と漆のふるさとをつなぐ新しい日本の旅をご提案!【漆の魅力に迫る京都~岩手3日間の旅・体験レポート③】

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滴生舎
日本の歴史・文化を語るうえで切っても切れないのが漆。工芸品や文化財など、日本国内のいたるところで漆が使用されているのを知っていましたか。今回は漆の魅力をもっと身近に、そして存分に体験してもらおうと2泊3日の訪日旅行者向けモニターツアーを実施したので、その様子を3回に分けてみなさまにお伝えします!

▼モニターツアー1・2日目の様子はこちら

プロローグ

2024年11月、日本の古都・京都と東北・岩手を巡る2泊3日の訪日旅行者向けモニターツアーを実施しました。一見何のつながりもなさそうに思えるこの2つの地域ですが、実は日本の歴史・文化に古くから結びつく「漆」でつながっています。京都にある寺社仏閣等では漆が塗装などで使用されていますが、そこで使用される国産漆の大半が岩手県で生産されています。2023年の全国生漆(きうるし)生産量は1,651kg。そのうち岩手県の生産量は1,344kgであり、国産漆のなんと8割が岩手県で生産されていることになります。

今回のモニターツアーは、主に訪日旅行客をターゲットに実施しました。寺社仏閣などで多くの漆を使用する京都と、漆の生産地である岩手県二戸市・八幡平市を巡りながら、漆の文化的価値や素材としての完成度の高さを学んでもらい、訪日旅行者にとって馴染みの薄い東北エリアを含めた「新しい日本の旅」を提案しました。
漆の魅力に迫るモニターツアーは東京駅からスタート

3日目 二戸市・小西美術工藝社

モニターツアー3日目の最初に向かったのは、国宝・重要文化財建造物や美術工芸品の装飾修理・復原などを行う「小西美術工藝社」。創業は江戸時代初期とされ、300年以上の歴史を誇る老舗企業です。建造物の修復等を通じて浄法寺漆を大量に使用する小西美術工藝社では、漆生産地の下支えとなるべく二戸支社を2016年に設立しており、文化財修復に使用される漆を苗木の生産から漆掻きまで一貫して行う、全国で唯一の企業として知られています。今回は2016年に設立された漆を生産する二戸支社にて、漆に関する説明と漆の掻き方を実演していただきました。

まだまだ知らない漆の世界

みなさんは「漆」という漢字を見て何か気づきませんか。ウルシは樹木でありながら、漢字の部首は「さんずい」です。漆は木材としてではなく樹液、つまり液体として古来から人々に求められていたと小西美術工藝社は考えます。漆は仏像や建造物などで使用されており、北海道にある縄文時代の遺跡から漆塗りの副葬品が見つかるなど、日本と漆は深い関係で結ばれています。このように古くから使用されている漆ですが、小西美術工藝社ではこの漆を使って日光東照宮や秩父神社などの修復を行っています。
漢字からひも解く漆の役割
漆に関するお話を聞くなかで、参加者から「漆の質はどのように判断しているのか」という質問がありました。これは漆を扱う関係者のなかでもたびたび話題になるそうですが、その答えは「人によって判断基準が異なる」というものでした。漆を扱う人が作業しやすいと感じるもの、それがその人にとっての良い漆なのだそうです。漆は使用する人だけでなく、用途によって求められるものが異なるため、「まずは多くの漆を採取し、様々な漆を提供できるようにする」、これが漆掻き職人の使命であると言います。
日光東照宮での修復作業について説明していただく

漆掻きを体験して分かるその大変さ

漆について説明を受けたのち、実際に漆掻きを体験させていただきました。漆掻きの技術は簡単に身につくものではなく、一般的に技術習得まで5~6年程度要する非常に難しいもの。ご担当者に説明を受けながら幹を鎌で削り、漆鉋(かんな)で傷をつけていきますが、真っすぐに傷をつけるのが難しいだけでなく、想像以上に力が必要だったそうです。腕だけでなく体全体を使うのが重要とのことで、職人がスムーズに漆を掻く姿を見て参加者からは驚きの声が上がっていました。
漆掻きについて説明を受ける参加者
実際に漆掻きを体験
小西美術工藝社 詳細はこちら

3日目 二戸市・滴生舎

続いて訪れたのは、浄法寺塗を広めたとされる天台寺にほど近い「滴生舎」。浄法寺漆の産地である二戸市浄法寺で1995年より漆器づくりを続けており、漆を塗る作業の見学や漆器を購入することができます。ここでは漆を塗る前の「木地」の加工を見学させていただきました。

かつては地域で分業されていた漆産業

お椀などの形に成形された、漆が塗られる前の木のことを「木地」と言います。滴生舎では丸太の状態から木地を制作し、漆塗りまですべての作業を行っています。漆生産が盛んな安比川流域では川の上流から下流にかけて、木の加工をする人・漆を精製する人・漆を塗る人と、かつては分業されていたそうです。木地を加工する木工室の中に入ると、丸太やブロック状の木材がたくさん置かれています。こちらでは丸太からお椀づくりのベースとなるブロックを切り出し、さらにお椀型に成形しますが、お椀型に成形した木材にさらなる加工を行うまでの間、木材を1年間自然乾燥させなければいけないのだそうです。木にはもともと水分が含まれていますが、乾燥すると木材が変形・収縮するため、木の状態を安定させるためには非常に長い時間が必要となります。
お椀のベースとなる丸太
乾燥が終わったお椀型の木材は、木地師によって漆が塗られる前の木地に加工されます。集中した様子で木地を加工していきますが、この作業には非常に難しく、時には木材を基準となる厚みよりも削りすぎてしまうことも。一度削った木材はもとに戻せないため、その際は漆を塗る工程で厚みを調整するそうです。現在は木地の加工に電動の機械を使用しますが、かつてはすべて人の力だけを使って加工しており、非常に大変な作業であったことがうかがえます。
木地を加工する木地師

同じものは2つとない漆器

非常に高い技術によって加工された木地は、漆が塗られることで漆器となり人々のもとへと届きます。漆器はどれもが1点ものであるため、漆器を選ぶ際には実際に手にとってなじむものを購入し、長く使用してほしいと、漆器制作を行う方たちは願っています。
漆器を手にとり眺める参加者
滴生舎 詳細はこちら 岩手県二戸市浄法寺町御山中前田23-6

3日目 八幡平市・佐藤ひとみさん

この日の昼食は八幡平市にある昔ながらの古民家でいただきました。八幡平市にお住いの佐藤ひとみさんは郷土料理の伝承活動をされており、今回は岩手県の郷土料理を漆器でいただきます。寒さが厳しい岩手県では米が不作になることがあったそうで、そうしたときでも食生活を安定させられるように古くから小麦や蕎麦の栽培も行われていました。今回いただいた郷土料理のなかには小麦粉を使った「ひっつみ汁」もあり、野菜やキノコがふんだんに使用されたひっつみ汁は冷えた体にしみわたります。これほど温かいひっつみ汁ですが、漆器をもっても熱く感じないのはなぜか。その答えは漆器に使用されている木材にあります。木は保温性能に優れているため、熱いものを入れても漆器を手にとることができるのです。ひっつみ汁の他にもおへその形をした「へっちょこだんご」をはじめ、岩手県で長年受け継がれてきた郷土料理の数々をいただきました。
おいしそうな郷土料理がずらりと並ぶ
こちらでは参加者に「くるみ味噌付たんぽ」づくりの体験もしてもらいました。つぶしたお米を串の周りに巻き付け、くるみ味噌を塗って焼いてみると、くるみ味噌の焼ける香りが部屋中に広がり食欲がそそられます。あまじょっぱいくるみ味噌たんぽは何度も食べたくなる味で、参加者にも大好評でした。
「くるみ味噌たんぽ」づくりを体験

3日目 八幡平市・安比塗漆器工房

モニターツアーの最後に訪れたのは、八幡平市で安比塗の制作を行う「安比塗漆器工房」。こちらでは漆器の作業工程における塗作業をご説明いただき、お箸の絵付けを参加者に体験してもらいました。

塗重ねが重要な漆器

漆器は漆を何回も塗り重ねていることを皆さんは知っていますか。安比塗漆器工房ではひとつの漆器を制作する中で漆を計6回塗り重ねます。最初は漆を木地の内側に塗り、次に外側を塗る。この作業を計5回繰り返します。片面を塗って1日経過してからもう片面を塗るため、両面を塗り終えるのに2日を要します。塗った面は研ぎ出しで表面を滑らかにし、その後漆を再度塗り重ねていきます。計5回の塗重ねが終わると最後は仕上げ塗りを行いますが、ホコリが入りこまないように細心の注意を払って行われます。塗り作業の開始から漆器の完成まで最短でも2か月を要するこの作業、職人は手先の感覚を頼りに漆の厚さを調整しており、非常に繊細な作業であることが分かります。塗りの作業で用いられる刷毛ですが、長くて黒い人の髪の毛が使用されているとのことで、この事実を知って参加者から驚きの声が上がりました。ちなみにこの刷毛を現在も日本で作ることができる職人はわずか2人だそうです。
漆の塗り作業について説明を受ける参加者
漆の塗り作業について説明を受けた参加者は、実際にお箸の絵付けを体験しました。筆を使って線を描いたり細かな場所を塗るだけでなく、スポンジを使ってグラデーションを試す人もいたりと、オリジナリティあふれるお箸を作っていました。漆で絵付けをしたお箸は後日手元に届くということで、完成したお箸が早く到着するのを皆さん楽しみにしている様子でした。
箸の絵付けを体験
絵付けの終わった箸
安比塗漆器工房 詳細はこちら

漆の魅力を知る旅に出てみませんか?

漆の生産地・岩手と漆の消費地・京都を結ぶ、日本の新たな観光ルートを体験する今回のモニターツアー。漆の素材としてのすばらしさや歴史・文化的価値を知ることができるだけでなく、漆に携わる方々のさまざまな思いを直に感じることができる、とても魅力的なルートであるとあらためて実感しました。日本を訪れる外国の方々にこのルートを巡っていただき、一人でも多くの方に漆の魅力に触れてそのすばらしさを知ってもらいたいと思った3日間でした。漆に少しでも興味を持っている方は、ぜひ今回のツアーを参考に各地を巡ってみてください!

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