【運行終了】プロジェクト立ち上げメンバーである社員が語る「走るカフェ」【フルーティアふくしま】

  • 福島
  • 特集
「のってたのしい列車」とはJR東日本が運行している列車で、乗っている間に楽しい体験やサービスが受けられる、普段乗っている列車とはちょっと違う列車です。今回はその「のってたのしい列車」の中から「フルーティアふくしま」についてご紹介します!

「フルーティアふくしま」は主に週末、福島県の磐越西線(郡山駅~会津若松駅・喜多方駅間)を走る列車で、車内で福島県産フルーツを使用したスイーツや、コーヒーなどを味わうことができる「走るカフェ」です。

2022年4月から予約方法が変わり、「のってたのしい列車予約サイト」にてより一層簡単に予約できるようになりました。お客さまにもっと「フルーティアふくしま」を知っていただき、より楽しんでご乗車いただきたい!ということで、今回は「フルーティアふくしま」のプロジェクト立ち上げメンバーで、JR東日本から現在JR東日本びゅうツーリズム&セールスに出向している佐藤さんにお話を伺いました。

プロジェクト立ち上げの背景から、こだわりポイントや思いがけなかったことなど、知ると「フルーティアふくしま」に乗ってみたくなるお話をたくさんしていただいています。
ぜひこの記事を読んで、「フルーティアふくしま」にも乗ってみてくださいね♪
「のってたのしい列車予約サイト」はこちら

「フルーティアふくしま」プロジェクト立ち上げメンバーの佐藤さんに伺いました

佐藤 浩之さん

目次

■「フルーティアふくしま」のコンセプトが誕生するまで
・1時間の中で提供できる車内サービスとは
・鉄道屋が始める「カフェ開店」

■列車だからと言って譲れないポイント
・こだわりのコーヒーにも列車ならではの苦労が

■車両の内装ができあがるまで

■ついに「フルーティアふくしま」運行開始!

「フルーティアふくしま」のコンセプトが誕生するまで

フルーティアふくしまは7周年
私が「フルーティアふくしま」のプロジェクトに加わった時には、磐越西線にリゾート列車を作るという話はあったのですが、どういう列車とか、細かいコンセプトはほとんどなかった状態でした。

私を含め中堅、若手社員で構成されたプロジェクトチームで「どういうコンセプトがいいか」をまずは検討することになったのですが、なかなか「これだ!」というアイデアが出て来ず、メンバーみんなでかなり頭を悩ませました。

「会津に向かう列車」ということで、「歴史」をテーマにした列車はいいじゃないかと真剣に話したことは覚えています。車内で歴史、文化というのを感じられるイベントをやったり、それに合わせた内装にしたり、会津らしい旅をリリースできるのではないかと考えたりしました。

ただアイデアとしては面白いでしょうけど、深く考えれば考えるほど「車内で歴史を感じてもらう」ってどういうことか、それで本当にお客さまに喜んでいただけるのかと中々煮詰まらなくて何か月も経ちました。
TOHOKU EMOTION
越乃Shu*Kura
そんな時当時の上司の発案でJR東日本グループの企画会社からもアドバイスとか知恵をもらえる機会がありました。
その中で色々話をさせていただいた中で「フルーティアふくしま」に繋がるようなヒントが出てきたんです。

私たちも歴史とか言っている中にやっぱり「ごはん」や「食べ物」だよね、ということも出ていました。ただ、レストランがテーマの「TOHOKU EMOTION」があり、お酒だと「Shu*Kura」とか、「フルーティアふくしま」より先に「お酒、ごはん」はあったんです。そのため「他の列車と似ているよね」と、具体的にならなかったんです。

1時間の中で提供できる車内サービスとは

車体にはカフェらしさを感じるロゴマーク
「フルーティアふくしま」にご乗車いただく時間はそんなに長くありません。例えば郡山駅から会津若松駅までって1時間ちょっとなんですよね。1時間ちょっとでちゃんとした食事をするって、やっぱり中々時間的に難しい。「TOHOKU EMOTION」みたいに長く乗れればいいですが、前菜出して…とかやり始めたらすぐに会津若松駅に着いてしまう。

福島県には美味しい果物がたくさんあるんです。「フルーツ王国」といっても、過言ではないと思います。そこで、1時間ぐらいしか乗らないのであれば、「福島県のフルーツを活かしたティータイムを楽しめるカフェというのはどうなんだ?」という話が出てきました。
アンケートでも列車の旅の面白さで「食」がすごく上位にあったり、またプロジェクトの私達にも「ファミリーや女性のお客さまにもご利用いただける列車にしたい」という想いがあったので急に話が具体化しました。

1時間という乗車時間、フルーツもりだくさんの福島県、「食」をテーマにした列車旅の楽しさ、それから他の「のってたのしい列車」などとも差別化できるとこのあたりでぐっと最後まとまった感じでしたね。

鉄道屋が始める「カフェ開店」

発車するとオリジナルスイーツとフルーツジュースが各座席に運ばれてきます
「列車を作るって何をすればいいの?」って教科書があるわけじゃなかったので、そこからの苦労もありました。

例えば、当時私は鉄道会社に就職した鉄道屋さんなわけです。車内でスイーツを想像してティータイムを楽しんでいただくことはカフェを開店するのと一緒なので、店舗運営から行政の手続きまで様々なノウハウが必要なんですね。
鉄道部門だけではそういうのがわからなかったので、JR東日本グループ内にある列車内での飲食サービス提供のノウハウを持つ会社と一緒になって列車づくりを進めました。とは言え、私も少しでも勉強しようと鉄道部門の社員なのに職場のデスクに「カフェを開店する人向けの本」というのを本屋で買ってきて置いていました。

すると周りから「おまえ独立するの?会社辞めちゃうの?」「違いますよ!フルーティアですよ!カフェを開店するのってとても大変なんです。知ってました?」みたいな会話を、よくやったりしました(笑)。やらなきゃいけないことが色々あり、手探りでやるのが大変でしたね。

列車だからと言って譲れないポイント

福島県産のフルーツを使用したオリジナルスイーツ
「走るカフェ」というコンセプトでまとまって、具体的には…となった時にやはり「列車の中でパンとか焼けたらいいね」とか、夢をみんな語るんですよね。でも検討を進めていくと、やっぱりできないことが色々出てきました。

それでもこだわったことは車内でお客さまに楽しんでいただくスイーツには福島県産のフルーツを使うということでした。「全部の食材を福島県産」とかそういうのはできませんが、いちごのスイーツならいちご、桃のスイーツなら桃と少なくともメインのフルーツには、福島県産のものを使うということ。そうでなければフルーツ王国・福島をお客さまに楽しんでいただくことができません。

さらに、提供するスイーツはフルーティアに乗らないと食べられないということ。
せっかく「フルーティアふくしま」にご乗車いただくのですから、この列車に乗ったからこそ味わえるスイーツを提供しようという想いを多くの関係者が持っていました。列車に携わる私たちはもちろん、車内で提供するスイーツをつくってくださっている地元の方々のご理解とご協力があって「福島のオリジナルスイーツ」を実現することができたのは本当に良かったです。

こだわりのコーヒーにも列車ならではの苦労が

1号車のカフェカウンターではおかわり自由のコーヒーやアイスティーを提供
車内でホットコーヒーをお出しするのですが、少しでも美味しいホットコーヒーをどのように用意するかという点も悩みの種でした。本物のカフェと同じようなものを提供したいという想いはあるものの、列車内でできることにはどうにも制限があります。

そんな時、車内での飲食サービスで協力していた会社さんから「長い時間が経ってしまったコーヒーなんてお客さまに出せない」という話があり、新幹線車内にも設置しているものと同じコーヒーメーカーを「フルーティアふくしま」の車内にも置き、お客さまにお出しするタイミングとコーヒーを淹れるタイミングが少しでも近づくように工夫をしてくれました。

「フルーティアふくしま」のホットコーヒーを一人でも多くのお客さまに美味しく楽しんでいただけたらなと思っています。

車両の内装ができあがるまで

明治・大正時代の西洋モダンと自然の調和をイメージした外観
私は車内サービスの販売面が主な担当だったので車両については、JR東日本の車両部門や設計会社の方々が担当しました。それまでに運転されていたリゾート列車は例えば元の車両の形が分からないくらい窓を大きくするなど外観もかなり大きく変えていました。だから鉄道好きの方は外から撮影すると結構かっこいい写真が撮れたと思います。

でも、車両にかけられる予算もある中でお客さまに「走るカフェ」を堪能していただけるようにするには特に内装に力をいれなければならないのではないかという話になりました。

当時、他の鉄道会社さんでも外装を見ると元の車両の形とは大きく変わっていなくても、車内は元が分からないくらいすごいコンセプト通りに内装を仕上げているような車両が登場していたんです。

「フルーティアふくしま」も719系っていう車両を改造して使っています。外観は赤瓦とか黒漆喰壁、明治や大正の西洋モダンと自然との調和を表現していて、元の719系とは全く違う色をしているのですが、もう鉄道好きな方は719系にしか見えない。窓の配置やドアの数が違うといっても車両としての形そのものはそんなに色々変わっていません。
落ち着いた内装
その分というわけではないですが、内装は元の719系からがらりと変わっていて、「走るカフェ」というコンセプトをはっきりさせているんです。明治、大正時代の近代建築とか会津塗の豊かな質感などを表しています。そういうところは車両担当部署がすごく大切にしていて、インテリアとかもこだわってたんですよね。
なので、車両デザインがある程度出来上がってきた時には、車内アテンダントが着用する制服もその車内の雰囲気に合うものに寄せるなど、そこからどんどんコンセプトを繋げていった感じですね。

鉄道会社に何年も勤めていましたけど、このプロジェクトの中で入社以来初めて車両設計の会議に呼んでもらう機会がありました。そこでフルーティアの塗装とか車内はこんな感じを予定してますという絵を初めて見せてもらって「こうなるの!」と思って見ていて、特に車内が思っていた以上にカフェっぽくなることにすごくびっくりしたことを覚えています。

特に車内に力を入れた車両ができたっていうのは今でもすごく良かったと思いますし、車両担当の皆さまには感謝しています。

ついに「フルーティアふくしま」運行開始!

郡山駅の見送り
個人の話になっちゃいますけど、運転初日、1号が郡山駅を発車する前にホーム上で出発式があって、地元地域やJR東日本の代表者が挨拶したりして、私は1号の出発準備をしていたので出発式の様子を見ていることはできませんでした。

ただ式の中で地元の学校の生徒さんによる吹奏楽の演奏があって、素敵な演奏とともに、「フルーティアふくしま」デビューおめでとう!というお祝いメッセージをみんなで声を合わせて言ってくれていました。全然JRと関係ない生徒さんたちじゃないですか。そんな風にやってくれてるのを聞いたときに、車内で作業をしていたんですけど、すごくうれしく感じて、ちょっと恥ずかしいですが涙ぐんじゃったんですよ。


瞬間瞬間は違いますけど、1日目の運行が無事に終わってこの列車に関わったメンバーで「今日はお疲れね」って話したときにほかのメンバーからも「ちょっと今日うるっと来ちゃった」みたいな話をしていました。苦労もありましたし、ちゃんとデビューさせられるのかな?と思うこともあったので、今日ここで関係した人たちの思いは同じだったんだな~っていうのは思いましたね。

ただ、実はデビューして2ヶ月後くらいに転勤してしまいました。なので、その後多くのお客さまにご利用いただいた様子をあまり見る機会がなかったのはちょっぴり残念でした(笑)。
佐藤さんと当時のパンフレットやグッズ

「フルーティアふくしま」をご利用するなら「のってたのしい列車予約サイト」へ!

今後も「フルーティアふくしま」の魅力に迫った記事や、他の「のってたのしい列車」に関する記事の掲載も予定しています。ぜひお楽しみに!

※「フルーティアふくしま」は2022年4月より、Web予約限定となりました。
「のってたのしい列車予約サイト」はこちら
この記事に関連するタグ
前の記事 一覧へ戻る 次の記事
関連記事