地域のキーマンが語るサステナブルな地域づくり【福島県】~漆とロック株式会社代表 貝沼 航(かいぬま わたる)氏~
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シリーズ第1回目の記事はこちら
インタビュー連載第2回目は【漆とロック株式会社代表 貝沼氏】
「漆とロック株式会社」と会津漆器について、もっと知りたい方はこちら
インタビューの前に… 会津漆器とは?
会津の地に本格的に漆器生産が根付いたのは、安土桃山時代。豊臣秀吉の命を受けて会津の領主となった蒲生氏郷(がもう うじさと)公が、産業として漆工芸を奨励したことによるとされています。氏郷公は、前の領地であった日野(滋賀県)から木地師(きじし)や塗師(ぬし)を呼び寄せて、漆工技術を伝承させました。
これによって会津漆器は飛躍的な進歩を遂げ、漆の栽培や木地などの素材の生産から分業による漆器づくりまでを一貫して手がける一大産地となっていったのです。
周辺の山々に自生するトチ、ケヤキ、ホウ等の木材を器の素地として用い、そこに漆を何度も塗り重ねて仕上げられる会津漆器は、日常使いしやすい温もりが特徴です。
就職をきっかけに来た会津で、会津漆器の世界と出会う
ーまずは自己紹介をお願いします
ー現在のお仕事内容を教えてください。
出来上がった漆器だけでなく、素材の奥深さに気づく
ー植栽を始めたきっかけを教えてください。
ー震災をきっかけに、漆そのものの本質を考えるようになったのですね。
漆器業界の抱える課題を解決する「循環型漆生産モデル」の確立
ー植林に関わっていく中で見えてきた課題とは何だったのでしょうか?
漆木を植えて漆液が採取できるようになるまでは約15年の歳月がかかるため、その間に現在の資源を使い果たしてしまう恐れがあります。そんな背景から、全国的にも漆木の植樹に向けた動きが見られています。私たちの住む会津も江戸時代には百万本の漆木があったという記録も残るほどもともと大きな漆の産地でしたが、現在は、国産漆全体の1-2%ほどの生産量しかありません。
ーただ植えれば良い、というわけではなさそうですね。
行政が植えて、組合が管理する方法もあるのですが、知識が十分でないため、上手く機能しないことも多いのです。例えば、漆木は品種や系統もありますし、15年後の実際の漆掻きの作業から逆算して植え方や管理を考える必要もあります。だから、適したものを選んで効率的に植え育てるためには、漆に詳しい人が中心になりながら、加えて漆器産業内だけでない新しい連携も必要なんです。
次に、「どこに」植えるかという問題です。漆木は育つまでに15年もかかるし、木に触れるとかぶれることもあるんです。地主さんや集落の方々の理解を得られないと、なかなか植える場所が見つからなかったり、反対意見によって途中で植栽計画が頓挫するということもあります。
ーそういった問題はどうしたら良いのでしょう?
ーつまり、耕作放棄地に漆を植えれば課題解決になるということですね!
さらに、植栽地で人々が交流したり、見学ツアーを開催したりすることで、地域の交流人口が増えて、集落にも良い影響が出てきます。このような取り組みをとおして私たちは、地域に根ざした持続可能な取り組みを目指していきたいと考えています。
ーとても「サステナブル」な取り組みが始まっているのですね。
試験植栽までは3人でやってきましたが、これからは本格的に活動を始めて、メンバーも増やしながら、さまざまな団体とも連携して、輪を広げていきたいと思います。
猪苗代の土地に漆木が根を下ろし、ツアーで見学に来られたお客さまとの出会いも
ー「猪苗代漆林計画」に取り組む中で、嬉しかった体験を教えてください。
夢は「漆の楽園」を作ること
ー「猪苗代漆林計画」の活動を通して叶えたい夢や目標はありますか?
漆器を使うことこそが、一番の課題解決策
ー会津漆器普及のために行っていることを教えてください。
漆器は自然素材から作られるものなので、自然との繋がりを日々の暮らしの道具を通して感じていただきたいですね。漆器への入り口となるイベントも「めぐる」で開催していますので、ぜひそこで漆器と出会い、選んでいただき、長く愛用していただければと思います。
これからどんな器と一緒に生きていきますか?
ー記事を読んでくれた方へメッセージをお願いします
世代を超えて、良い循環の中で育まれていく会津漆器の世界
今回は、会津漆器の伝道師ともいわれる貝沼氏のインタビューでした。今後も*and trip.ではサステナブルな仕事に携わる地域のキーマンへのインタビューを連載予定です。次回もお楽しみに!